スイッチングハブの概要
スイッチングハブは、イーサネットにおける代表的な機器で、データリンク層(OSI参照モデルの第2層) で動作します。受信したフレームの 宛先MACアドレスを参照して、適切なポートへフレームを転送することが可能です。
リピーターハブとの違い
かつて使われていたリピータハブは、受信した信号をすべてのポートにそのまま送り出す「電気的な中継装置」でした。これに対して、スイッチングハブはフレームを解析して宛先ポートにのみ送るため、不要な通信が発生せず効率的なフレーム転送が可能です。

コリジョンドメインの分割
リピータハブではすべてのポートが1つのコリジョンドメインに属し、同時に送信するとフレームが衝突が発生する可能性がありました。これに対して、スイッチングハブではポートごとに独立した通信が可能であり、コリジョンドメインが分離されるため、効率よくフレームの送信が可能になります。
フォワーディングとフラッディング
フォワーディング(Forwarding)
MACアドレステーブルに宛先MACアドレスが登録されている場合、対応するポートにだけフレームを送信します。この動作によって、不要な通信が他のポートに流れず効率的な通信が可能になります。

フラッディング(Flooding)
宛先MACアドレスがMACアドレステーブルに登録されていない場合、スイッチはどのポートに送ればよいかがわかりません。そのため、受信元ポートを除く すべてのポートにフレームを送信します。

MACアドレステーブル
MACアドレステーブルとは、スイッチングハブが保持するMACアドレスとポート番号の対応表です。どの端末(MACアドレス)がどのポートにつながっているかを記録し、フレームを転送するために使われます。

学習手順(MACアドレスラーニング)
スイッチングハブがフレームを受信すると、まず送信元MACアドレスを確認
受信ポートと送信元MACアドレスの組み合わせをMACアドレステーブルに記録
すでに登録がある場合は最新情報に更新
宛先MACがテーブルに登録されている場合 → 該当ポートへフォワーディング
宛先MACが登録されていない場合 → フラッディングで全ポートに転送
一定時間通信がなかったエントリは削除(通常300秒程度)
これによりネットワーク構成が変わっても自動で適応できる
転送方式の種類
ストア&フォワード方式
フレームを最後まで受信してから転送する方式です。エラーチェック(FCS:Frame Check Sequence)を実施できるため、信頼性が高いですが、全フレームを受信してから送るので遅延が大きいというデメリットもあります。現在のスイッチングハブの主流の方式です。
カットスルー方式
フレームの先頭(ヘッダ部)を受信した時点で転送を開始する方式です。宛先MACアドレスを見て即座に転送するため、遅延が非常に少ないのが特徴です。ただし、エラーチェックを行わないため、誤りフレームも転送してしまうというデメリットもあります。低遅延を重視する環境(金融システム、ハイパフォーマンス環境)で利用されることがあります。